- 山口のひと
- 2018/11/05
【山口よりみち情報】今年も美味しい「九郎米」の新米が届きました~山口県のコシヒカリ
ふくの袋セリと同じ頃に届く。山口県産コシヒカリ「九郎米」の新米だより
三方を海に囲まれた山口県の秋の風物詩「ふぐの袋セリ※」が見られる頃、稲刈りの時期が訪れます。 新米は、早稲、遅いものを晩稲、その間の稲を中稲と言われ、収穫時期によりお米の特徴も異なります。 皆さまがいつも召し上がられるご飯はどのようなお米でしょうか。 ※ふくの袋セリ:下関市南風泊港のセリ人と業者が布袋に手を入れ、指先で値段を決めるという独特のセリ。「一杯のおいしご飯」 に出会うということ。
「お漬物だけで何杯でも食べたい」。それほど美味しいお米をお客様にお召し上がりいただきたい。その思いで大谷山荘・売店の担当者が、おいしいお米を探し求め、ようやく辿り着いたのが「佐々並の九郎米」でした。 今回、大谷山荘 別邸「音信」の食事で提供しておりますコシヒカリ「九郎米」の生産者・高木さんに、こだわりのお米づくりについて、話を伺って参りました。水始めて涸る
「九郎米」の生産者・高木さんは、「自分たちの作物は自分たちで販売する」方針を掲げている、九郎ヶ里振興会に所属しています。自分たちで作ったお米を安心してお召し上がりいただけるよう、土づくりからこだわり、低農薬のお米を育てておられます。近年では、県外から高木さんの「九郎米」を買いにお客様が足を運ばれるようになりました。これほどおいしいコシヒカリがどのように生まれているのか、高木さんの声とともにお伝えしたいと思います。お米をおいしく食べてもらうために…
「自分たちが作ったものを自分たちで販売する、当たり前に思われるかもしれませんが、実は、時代の流れの中で変化をしながら、今を迎えているのです。 まずは、インターネットによる価格崩壊が衝撃的で、当初は、その急務の対応として、生産量の増加しかないと考えました。今まで作ってきたお米を手間をかけずに大量に作り、安く売るという方法です。 しかし、生産量を上げるには、今まで作ってきた田んぼでは限界があるため、新たな土地を購入し、田んぼを作らなければなりません。稲を育てる土壌を作るのには歳月を要するため、現実的に有効な策としては、程遠いものでした。さらに、30代40代の若手生産者、継承不足が、追い打ちをかけるように生産を困難にしておりました。」 そのような状況で、高木さんが着目したのはお米の「質」でした。 「地元の人間が生き方を変えようという意識を持たなければ、いくら周囲が介入したところで、生産量も価格も、そして質も変わりません。山間部という立地のため、年間を通じてわずか何百俵しか作れない農家にとって、量ではなく、味にこだわって行かなければ、これから先は生き残っていけない。」 そこで、高木さんは、「誰に召し上がって頂くか」、ということを考えながら、従来の生産過程を見直し、試行錯誤を繰り返しながらも、美味しいお米づくりに取組み続けました。誕生したのが「九郎米」でした。 実際に召し上がっている方に、「九郎米」の味を訪ねてみると、「炊き立ての甘味や香り」はもちろん、冷めても、お米を研いだ時の香りがするとのことでした。 ここで、わずか数百俵と生産量の限られたコシヒカリ「九郎米」は、どのような環境で作られているのか、見ていきたいと思います。九郎米をつくる自然環境
高木さんの作る「九郎米」の田んぼは、おいしいお米作りにかかせない「水、土、空気」の3つの要素が揃っている、萩市佐々並地区にあります。 佐々並地区は準高冷地で、昼夜の寒暖差が大きく、黒ヶ谷という傾斜の棚田(標高約350メートル)に位置し、空気は澄み、清らかな水は男岳から流れ、土壌は赤土かつ粘土質の特徴をもっています。 江戸時代よりお米の栽培地として代々、豊かな土地を大切に受け継いできた米どころであり、「九郎米」は、この地に田畑を開拓した「九郎左衛門」一行より名づけられました。 その高木さんのお米「九郎米」は、画像のような山間部の斜面につくられた棚田で、農薬を使わず堆肥だけで作っております。 実は、一度でも農薬を使用してしまった土壌をまっさらな状態に戻すためには、最低でも5年以上の歳月を要するとのことです。 「おいしい」お米をつくるために、高木さんは、お米の苗を植えてからはもちろんですが、何よりも土壌づくりに心血を注いだといいます。 また、画像のように山間部の棚田は、往復するだけでも大変な重労働。お米にとっては最良の環境も、お米を育てる人には厳しい環境です。農薬を使わず、昔ながらの堆肥で土を作ります。お米の育つ土壌にとことんこだわるならば、こうした自然と生活の折り合いの難しさに、日々挑戦しなければなりません。 「年齢を重ねるごとに厳しくなってくる」と、小さくつぶやかれた言葉が印象的でした。 このような日々の挑戦があるからこそ、おいしいお米が生まれ、それを召し上がった人から人へと九郎米の名前が口伝てに広がっていきます。「子供が給食のごはんを食べられなくなってしまいました。でも、信頼できるお米を子供にたべさせてあげたいから、またよろしくお願いいたします」、お客様からそのような声をいただいたことがあるそうです。「これは、親から子へ「九郎米」のおいしさが伝わる、ということであり、それは佐々並という、ふるさとの名がひろまることでもある」と仰っておりました。 この地道な努力が、高木さんの目指す地域の活性化につながり、私たちの豊かな食を支えているのだと実感いたしました。 今年は、夏の猛暑のため収穫量が7割程度と少なかったのですが、味はよいとのことです。 画像は、高木さんが、自らの田んぼの様子をスマートフォンで撮影した画像をいくつかご提供くださいました。 九郎米が作られている様子を、ブログにて配信されておりますので、ぜひ、ご覧になってくださいませ。■店舗情報 高木さんのお米「九郎米」は、こちらでお買い求めいただけます。 ↓ 大谷山荘2階のお土産処「山茶花」 <九郎米> 商品名:九郎米 300g 1080円 生産者:高木政夫さん 生産地:萩市佐々並黒ヶ谷(所要時間:大谷山荘より車で約50分)